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契約についての基礎知識・再確認

寺本法律会計事務所
弁護士 飯塚 美葉

■契約について

 契約とは、要するに人と人との約束です。
 商売をする、事業をするということは、ほかの人に物を売ったり、ほかの人から材料を仕入れたり、お給料を払う代わりに働いてもらったり、お金を貸したり借りたり、いろんな人といろんな約束をすることで成り立っているとも言えます。

 法律の理屈では、契約を成立させるのには、書面で契約書を作成しなくても、口頭の合意で足りるとされています。つまり、いわゆる「口約束」であっても、契約としては有効に成立しており、別に契約書を作る必要はないということです。
 といっても、契約書のない口約束だけでは、あとになって細かい内容を忘れてしまうこともあるでしょうし、都合が悪くなるとしらばっくれる人もいるでしょう。また、口約束の現場にいなかった人には、どんな約束があったのかあとで知ることができません。

 契約書は、このためにつくられるものです。
 契約書があれば、あとになって相手が違うことを言い出しても、契約書を見せて、「あのときこう約束したじゃないか。」と、約束の履行を求めることができます。
 また、裁判所に訴訟を起こしたときも、契約書を証拠として提出し、「あのときこういう約束をしたのです。」と、裁判官などの第三者にわかってもらうことができます。裁判では、特にこのような「書面の証拠」は重要な役割を果たします。

 ところで、日本では、契約書にも、例外的な場合を除いて、特に法律上決まった書式があるわけではありません。
 難しい書式を用意して、決まったところにハンコを押さないと、契約書としての効力がない、と考えている方もいらっしゃいますが、原則として、あまり堅苦しく考える必要はありません。先ほど申し上げたような、「約束をしたことの証拠」という意味では、その書面を見て、|と誰が、△匹ΔいΔ海箸砲弔い董△匹鵑別鸞をしたのか、がわかれば十分なのです。

■契約書の表題について

 契約書のタイトルは、契約の内容がわかりやすい適当なものがあれば、そのタイトルにします。よくあるのは、お金の貸し借りの際の「金銭消費貸借契約書」、物の売買のときの「売買契約書」、継続的な取引であれば、「売買基本約定書」というのを作って、細かい数量や金額は別途合意するときもあります。
 しかし、タイトルそのものはそれほど重要ではなく、あくまでも約束の内容は、契約書の中身に書かれている内容になります。
 また、タイトルを付けにくい場合には、「確認書」「合意書」「覚書」などという抽象的なタイトルを付けることもあります。
 契約書は、通常は、契約の両方の当事者が署名、押印等するものですが、一方のみが署名押印して差し入れる「念書」というのもあります。
 いずれにしても、当事者と内容がはっきりしていれば、タイトルがどのようなものであっても、書面としての効力に変わりはありません。

■署名、印鑑について

 相手との間に合意が成立し、契約書を作成する場合、通常は、両方の当事者が、署名、押印をします。これによって、その契約書が、誰と誰との間の約束なのか、ということがわかります。

 日本では、印鑑がその人の証明として大きな役割を持っていますが、その人本人がたしかに自ら署名をしたということがわかれば、必ずしも印鑑が押されていなくても、裁判などでは証拠として評価してもらえることもあります。
 署名というのは、本人が自筆で氏名を書くことですが、記名というのもあります。記名は、必ずしも本人が書く必要はありません。よく、会社名などにゴム判を使用することがありますが、これも記名の一種です。
 記名の場合は、筆跡からは誰が書いたかわかりませんので、必ず、あわせて印鑑を押してもらうべきです。
 日本では、人の特定に、住所と氏名を使いますので、契約書なども、住所と氏名を書くのが通常です。法人の場合は、住所、会社名のほかに、会社を代表する権限のある人の氏名を記載してもらうことが重要です。

 印鑑には、実印とそうでないもの(いわゆる「認め印」)があります。法人の実印は、法務局に登録されていますし、個人の実印は市区町村役場に登録されますね。
 印鑑についても、登記申請に使うなどの特別な場合を除き、原則として、実印と認め印との間に押印としての法的な効力の違いはありません。
 ただ、印鑑登録された実印を使い、かつ、印鑑証明書を契約書とあわせて受け取っておけば、その法人または個人の存在や身元が、公的にも証明されている、ということになりますので、より確実になることは間違いありません。

 取り込み詐欺などで、実在しない法人と取引をしてしまい、代金をもらわないまま相手が雲隠れしてしまう、などということがありますが、どんな場合であっても、取引相手の正体をしっかりつかまえておくこと、約束の内容を証拠にしておくことは大事です。書式やタイトルにこだわる必要はありませんから、簡単な書面を作成したうえで、登記簿や印鑑証明書などで存在を確認しておくと、後でトラブルが起きたときに非常に役に立ちます。

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