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新会社法(1)有限会社の今後

寺本法律会計事務所
弁護士 飯塚 美葉

 去る7月26日、新しい「会社法」が制定公布され、会社の設立・運営に関する法制度が大きく変わることとなりました。
 なかでも大きな変化は、有限会社がなくなる、ということでしょう。

 これまで長い間、株式会社は農業生産法人にはなれないものとされており、平成13年の農地法改正によってようやく、株式の譲渡が制限された小規模な株式会社に限って、農業生産法人になることが認められたばかりです。このため、有限会社形態で農業をされている方もたくさんいらっしゃると思います。
 ところが、今度は、これまでの有限会社が制度上なくなり、株式会社として扱われることになりました。
 そこで今回は、新しくできた会社法のうち、主にこれまでの有限会社が今後どうなるかについて見ていきます。

■今までの有限会社の扱い

 有限会社がなくなるといっても、これまでの有限会社がすぐになくなるわけではありません。
 新しく有限会社を設立することはできなくなりますが、現行の有限会社は、新会社法において、「特例有限会社」として、おおむねこれまでと同じように扱われます。つまり、役員の構成や任期、持分の譲渡に関する規制についても、これまでの有限会社と特に変わらない扱いを受けます。商号も「有限会社」をそのまま名乗ることができます。(逆に、組織変更を経ないまま「株式会社」を名乗ることはできません。)
 一方で、これまでと同じような規模や構成で、新会社法の株式会社に移行することもできるようになります。(その場合は、新しい株式会社に関する規定の適用を受けるので、若干注意が必要です。)

■現行の株式会社と有限会社の違い

 これまでは、会社に関する法律は、合名会社、合資会社、株式会社について定めた「商法」と、「有限会社法」がありました。
 この中で、株式会社と有限会社は、出資者(株主または社員)の責任が出資を通じた間接・有限なものに限られる点でよく似ていたのですが、主に以下のような点で違いがありました。

最低資本金の額
   株式会社 1000万円
   有限会社 300万円
出資持分の譲渡
   株式会社 原則として、株式は自由に譲渡できる。
ただし、定款で、取締役会の承認を必要とすることができる
   有限会社 持分を譲渡するには必ず社員総会の承認が必要
会社の機関
   株式会社 取締役3名以上により構成される取締役会と、代表取締役、監査役の設置が義務づけられている
   有限会社 最低限取締役1名がいればよく、代表取締役、監査役は設置しなくてよい
役員の任期
   株式会社 取締役・監査役にそれぞれ法定の任期がある
   有限会社 任期について特に定めなくてもよい

■新会社法における株式会社

 新しい「会社法」では、有限会社と株式会社は株式会社に一本化され、以下のような制度になります。

 1最低資本金の制度そのものがなくなります。
 したがって、今後は、資本金が300万円に満たない場合でも、株式会社になることができます。なお、平成15年2月(施行)から導入された確認会社(いわゆる1円会社)についても、将来的に増資をする必要はなくなりました。(但し、確認会社は、定款で5年以内に増資しない場合は解散する旨の定めがあるので、この定款を変更する必要があります。)

 2出資持分(株式)の譲渡
 新会社法でも、株式の譲渡制限の定めを定款におくことができます。株式を譲渡するにあたって、取締役会を置いている会社では取締役会の承認、取締役会を置いていない会社では株主総会の承認を得ることが必要になります。
 新会社法では、このような譲渡制限を定めた会社(非公開会社)の中に、現行の株式会社と現行の有限会社の両方の形態を含めています。

 3会社の機関
 株式会社であっても、非公開会社であれば、取締役会および監査役を設置せず、最低限1名の取締役のみを役員とする形態を選ぶことができます。その場合、今までの有限会社と同様、取締役が会社を代表することとなりますが、取締役が複数いる場合は、代表取締役をおくこともでき、その場合は代表取締役のみが会社を代表します。

 4役員の任期
 新会社法では、現行の株式会社と同様、取締役は2年、監査役は4年が任期とされていますが、譲渡制限のある会社では、それぞれの任期を定款で最長10年まで延長することができます。

 このほか、新会社法には、会計参与制度の規定や、新たに創設された合同会社についての規定がありますが、今回はこれらの説明は省略します。

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