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株式会社 山開産商(長崎県諫早市)
代表取締役 山開博俊さん(57歳) ■農家に信頼される“長崎の苗”
父の代から野菜苗をつくり出して40年。今では「山開産商の苗」というよりも「長崎の苗」として全国の野菜農家から厚い信頼を得ている。苗のほとんどはJA、あるいは種苗会社からの注文を請けて生産されるが、近隣の農家からの直接買付にも少量だが応じる。 春まだ浅いこの日も始業を待っていたかのように、農業者が1人やってきた。買い求めたのはキュウリの苗110本。品物を準備する間は四方山話に花を咲かせるように旧交を温めるやりとりが続く。「あの人も父の代からの付き合いでしてね」というが、こうした縁は何も野菜苗に限ったことではない。コメの乾燥調製についても200戸以上から委託されており、毎年30kg入りで2万袋分を仕上げる。「どこも兼業家。自家飯米用に多くて50a程度しか作っておらず、乾燥機械が更新時期を迎えたら、そろそろ撤退したい」とは偽りのない心境のようだ。
年間の苗生産量は600万本で、全体の60%を占めるキュウリを筆頭に、トマトが15%。以下、メロン、スイカ、ナス等々と続き「野菜苗なら何でも。注文されれば全種類揃えられる」という、種苗会社には頼りになる存在だ。 農場は3カ所。ハウス面積の合計は現在2ha強に及ぶが、本社事務所と谷を挟んで広がる採石場跡地に新規農場の建設が進められており、今年中には2.4haにまで拡大される予定だ。これに要する投資額は2億円超で、地元地銀からの融資で賄っている。ちなみにその地銀筋からのアドバイスを受け入れて踏み切ったのが、有限会社組織から株式会社への移行で、資本金を2,000万円とし、2004年度から衣替えした。 野菜苗の生産に特化できたのは「良質な水に恵まれる土地柄であったこと」。100mも掘れば豊富な地下水が得られる。草創期にはハウスではなく露地での養育が主体だっただけに、経営として根づく上で「雪が降らないことも大きな利点」となった。このような環境の中で育つ苗は「姿が良く」、それは即「根も強い」、バランスの取れた良質品となる。そして培土管理も徹底しており、高熱殺菌が怠りなく施されている。
4月から新たに7人の新人が入社し、従業員・パートは合計で70人を数える。人材育成でポイントとなるのは販売・企画部門の強化。しかし「営業をやるにしても基礎となるのは苗に係る専門知識で、これを十分に固めることが優先される」。たとえば種苗会社等から接木について問われた時、技術的裏づけがあってはじめて「顧客に信頼される応対ができる」のであって、こうした水準に達する人員が「徐々に育っていることを頼もしく思う」。そのスタッフに常日頃から言い聞かせるのは「農家に迷惑を掛けてはいけない」ということ。「“長崎の苗”だから安心」というキャッチフレーズの実践を厳しく追求する。長男・博春さん(28)は専務、また次男・武士さん(24)も常務として、山開産商の経営に参画している。「少なくともあと10年。経営規模拡大のチャンスがあるうちは現役でいたい」と意欲は一向に衰えない。 日本農業法人協会では経営委員を務める。様々な工夫に富んだ経営に接することも確かだが、「少々補助金をアテにし過ぎるように思えてならない」ことも事実だ。これまで補助金を一銭たりとも受けていないだけに、この点が気になって仕方ない。 ©日本農業法人協会 |
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