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森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長 税理士・行政書士 森 剛一 ■資本の部と資本金資本の部は、資本金、資本剰余金及び利益剰余金の各部に区分されます。ただし、平成13年の商法改正に関連して平成14年に制定された商法施行規則により、土地再評価差額金、株式等評価差額金、自己株式を資本の部の末尾に追加して記載することとなりました。資本金は、株式会社の株主、有限会社などの社員、農事組合法人などの組合員、すなわち出資者が拠出した資本であり、一般に、出資者の持分の額面上の合計額を表します。 ■資本剰余金資本剰余金は、資本準備金とその他資本剰余金に分けられます。資本準備金には、農事組合法人が新たにその出資者となる者から徴収した「加入金」の額を含みます。加入金とは、定款の定め又は総会の決議に基づき新たに組合員となる者から出資持分を調整するために徴収するものです。法人税法では、資本の金額又は出資金額と資本積立金額との合計額を「資本等の金額」といい、資本等の金額の増加又は減少を生ずる取引を「資本等取引」として、課税対象から除外しています。 資本積立金額とは、株式払込剰余金や自己株式処分差益などをいいます。農事組合法人の加入金も資本積立金額に含まれ、原則として益金にならず課税されませんが、益金不算入の取扱いとなるのは、加入金を拠出しなければ組合員たる資格を取得できない場合に限られます。 なお、寄附金の損金不算入の規定では、寄附金のうち一定の損金算入限度額を超える部分の金額は損金に算入されません。損金算入限度額は資本等の金額を基礎として計算しますので、寄附金の取扱いにおいては資本金や資本準備金が大きい方が有利になります。 ■利益剰余金利益剰余金は、利益準備金、任意積立金、当期未処分利益に分けられます。当期未処分利益がマイナスの場合には「当期未処理損失」と表示します。前回、農用地利用集積準備金を負債の部に計上する場合の表示方法について説明しましたが、本来は、利益処分により任意積立金として資本の部に計上します。同様に、農業生産法人が受取った転作助成金(水田農業構造改革交付金等の産地づくり交付金など)には圧縮記帳が認められていますが、交付日から2年間、特別勘定として経理しておくことにより、特別勘定繰入額を損金算入することができます。農業生産法人の財務諸表を見ると、かなりの法人税等を負担している法人で転作助成金を受領しているにもかかわらず、圧縮記帳や圧縮特別勘定経理を一切していない例も多く、農業生産法人に認められている税法上の恩典をもっと活かしていきたいものです。 ■自己株式平成13年の商法改正前は、自己株式を資産として扱ってきましたが、自己株式は資本の部に自己株式の部を設けて資本から控除する形式で表示することとなりました。農業法人においても、アグリビジネス投資育成株式会社による出資の引き受けや従業員持株会制度の導入など、資本調達の手段が多様化してきています。農業生産法人である株式会社については、株式の譲渡制限がありますが、株主の間での株式の譲渡を円滑にすすめるためには、農業法人自体が自己株式を一時的に保有することも必要になってくるでしょう。 こうした場合、買入れにより保有する株式は「自己株式」として資本の部の末尾においてマイナス表示します。また、自己株式を処分した場合、資本取引となるため、その処分損益は損益計算書に計上されません。このため自己株式処分損益は、直接、貸借対照表の資本の部に計上することになります。具体的には、その他資本剰余金の部に、自己株式処分差益ならプラス、自己株式処分差損ならマイナスで表示します。 表.資本の部の表示
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