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法人化の税務(1)集落営農の税務

森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長
税理士・行政書士 森 剛一

「標準勘定科目」シリーズが終了し、今回から「法人化の税務」シリーズを連載します。第1回は「集落営農の組織化と税務」。集落営農の法人化の前段階として任意組織による集落営農を組織化し、これを担い手として位置づけて施策の対象とする流れになっています。とくに農業法人などの担い手がいない地 域では、集落営農をすすめるなかで担い手を育成していくことが課題となります。

■特定農業団体制度の課題

法人化の前段階の組織として位置づけられた制度として「特定農業団体」があります。米の価格が下落したときの対策として平成16年産から導入された担い手経営安定対策は、一定規模以上の認定農業者等を対象としたものですが、規模が小さい農業者であっても特定農業団体等の集落営農を組織することによって担い手経営安定対策補てん金の交付の対象となります。
しかし、特定農業団体でなくても「集落型経営体」として一定の要件を満たせば、担い手経営安定対策の対象となることもあり、特定農業団体の数は伸び悩んでいます。加えて「特定農業団体はすべからく人格のない社団ではないか」と一部の税務署から指摘されたこともあり、特定農業団体になって注目され、税務署から人格のない社団と認定されて消費税等の負担を強いられることを避けたいという意向も働いています。「担い手経営安定対策の補てん金に係る税務上の取扱いについて」(平成17年5月12日付け経営政策課長通知)において「集落型経営体が人格のない社団等に該当し、税務上、収益事業に対する法人税及び消費税の納税義務者となるかどうかは、各組織毎の運営実態等に基づき個々に判断するものであり、課税上、一律に人格のない社団等として取り扱われるものではない。」とされました。しかし、集落型経営体であれば自動的に任意組合と判断されるわけではなく、任意組合として認めてもらうための「実態」作りが必要です。

■集落営農への課税

法人化した集落営農は法人課税ですが、任意組織による集落営農は、’ぐ嫣塙腓覆藕柔員課税、⊃由覆里覆ぜ卉弔覆號/諭蔽賃痢鵬歙如△伴莪靴い分かれます。任意組合は構成員の集合体・共同事業体であるのに対して、人格のない社団は構成員から独立した意志のもとに活動を行う団体です(表参照)。
任意組合の場合、その利益を組合契約による損益分配割合によって構成員に按分し、構成員は按分利益を個別経営の農業所得に合算して申告します。任意組合の所得にも結果的には所得税が課税されますが、構成員が免税事業者であればその構成員の任意組合の事業に係る部分の消費税の納税負担は生じません。一方、人格のない社団は法人とみなされて法人税・消費税が課税され、基準期間の課税売上高が1千万円を超えれば事業全体に消費税負担が生じます。
任意組合と人格のない社団とのいずれに該当するかは運営実態に基づいて判断されるものですので、当事者は任意組合のつもりでも税務署からは人格のない社団と判断される恐れがあります。

■任意組合と認定されるための対応策

これまでの税務署の判断を見ると、ゝ約が任意組合を想定した内容であり、構成員に対する損益分配が行われて構成員が適正に申告していれば任意組合と認めるケースが多いようです。このため、任意組合と認められるためには、規約の整備と適正な損益分配による申告が基本となります。
しかし、オペレータ中心の運営となり、構成員の出役も随意となると、集落に農用地の権利を有する農業者の共同事業としての性格が弱まりますので、任意組合に即した規約を整備して損益分配を行ったからといって絶対に人格のない社団と認定されないか、という不安が残ります。
そこで、対応策の一つとして、集落営農を有限責任事業組合(LLP)とする方法があります。LLPは任意組合と同様に構成員課税とされていますが、LLPは登記することが要件となっているため、事後的に人格のない社団と認定されることがありえないと考えられています。もう一つの対応策として、任意組合としての共同事業性を保つため、集落営農組織(1階部分)とは別に任意組合の受託組織(2階部分)としてオペレータを組織化し、これに基幹作業を委託(外注)する方法が考えられます。次回は、この重層的な集落営農の組織化の手法について説明します。

表.任意組合と人格のない社団の比較

  任意組合 人格のない社団
性格 構成員の共同事業体 社会的に独立した団体
加入脱退 構成員の加入脱退を前提としない
加入は原則として全員の同意が必要
構成員の加入脱退を予定した組織
加入脱退は比較的自由
業務執行 各組合員が直接、業務執行権を有する
一部の組合員(役員)に委任も可
代表的機関が執行
課税 構成員課税 団体(法人)課税(法人とみなす)
会計期間
(課税期間)
組合で定めた期間
年1 回以上損益計算しない場合は暦年
団体が定めた期間(税務署に届出)
届出がない場合は暦年
一般的な例 建設業などの共同企業体(JV) PTA、町内会、同窓会
農業における例 数戸共同の受託組織 作目別部会、(任意組織の)直売所
JA 単位など広域の受託者組織

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