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法人化の税務(2)集落営農の組織化の手法

森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長
税理士・行政書士 森 剛一

 前回、任意組織の集落営農組織が人格のない社団と認定されないため、LLPを活用する方法について説明しました。ところで、担い手としての位置づけを明確にするため、集落営農組織を特定農業団体にすることが想定されますが、特定農業団体は5年以内に法人になることが前提となっています。しかし、法人化まで5年以内とされる過渡的な組織のためにわざわざ費用をかけてLLPの設立及び解散の登記をする必要があるのかという疑問が残ります。

■集落営農組織と中核受託組織による任意組合の2階建て

 農作業の委託者と受託者とでは互いに利益が相反しますが、集落営農では異なる利害を持つ2つのグループを組織化しなければなりません。ところが、これらを一つの組織にまとめようとすれば利害を調整して統一された意志のもとに運営する必要があります。そうなるとその組織は、構成員の共同事業である「任意組合」というより、個人から独立した団体である「人格のない社団」としての性格が濃くなります。

図1
 そこで、グループごとに別々の任意組合として組織化すれば、個々の組織はその構成員の共同事業としての性格を維持できます。具体的には、農作業の受託者=オペレータだけを構成員とした受託組織を集落営農組織と別に組織化します。基本となるのは、「集落営農組織」のうえに「中核受託組織」を組織する「2階建て方式」と呼ばれる形です(図1)。集落営農組織では、区域内に農地の所有権・利用権を持つ農業者が、稲作と転作にかかる農業を共同して行いますが、基幹作業は「中核受託組織」に外注します。「集落営農組織」の構成員は、基幹作業以外の畦畔の草刈などの管理や水管理、肥培管理を共同で実施します。ただし、共同で実施するといっても実際の作業は分担して行い、それぞれの地権者が自分の農地の管理作業をすればよいでしょう。

■中核受託組織が受託販売することにより特定農業団体に

 中核受託組織が、基幹作業を受託するだけで農産物を販売しない場合、特定農業団体と認められない可能性があります。一方、集落営農組織は、基幹作業を外部に委託しているため、農作業受託により農地の利用集積をしているとは言い難く、特定農業団体と認められない可能性があります。そうなると中核受託組織、集落営農組織のいずれも特定農業団体として認められないことになります。そこで、もう一歩すすめて、集落営農組織が中核受託組織に農産物の販売を委託して中核受託組織の代表者名義で販売することができれば、中核受託組織が農産物の販売等を実施することになり、特定農業団体として認められると考えられます。
 これにより、中核受託組織は、農産物の受託販売代金から農作業受託料金を差し引いて集落営農組織に支払うことになります。併せて、産地づくり対策など水田農業構造改革交付金等(転作助成金)も中核受託組織で受領すれば、農産物の販売代金と転作助成金を併せて精算することも可能で、損益分配の方法によっては、農作業受託組織の構成員が受取った分配金の全額を転作助成金相当額とすることも可能です。この場合、一時所得扱いによって集落営農組織からの分配金には実質的に所得税が課税されないことになります。

■転作受託組織や中核農家等への再委託

図2

 麦・大豆など転作作業のみを行う既存の受託組織がある場合、転作受託組織を改組して稲作も含めた中核受託組織とすることも考えられますが、最初から稲作も含めた全ての作業を一つの農作業受託組織に集約することは難しいでしょう。このため、新たに受託組織を結成してこれを中核受託組織と位置づけ、集落営農組織から稲作も含めたすべての基幹作業を受託します。しかし、既存の転作受託組織がある場合は、中核受託組織から転作受託組織に作業を部分的に再委託します(図2)。この場合、複数の受託組織が存在することになりますが、それぞれ別個の任意組合として位置づけます。また、担い手となる農業者や農業法人がすでにいる場合、これらの担い手の農地の基幹作業を中核受託組織が実施することには無理があります。このため、実情に応じて基幹作業の一部を中核受託組織から担い手等に再委託することも考えられます。一方、こうした担い手には中核受託組織に参加してもらいます。中核農家等に再委託しない分の基幹作業については、中核受託組織のオペレータで分担して実施することになります。
 ただし、中核受託組織が、受託した作業を再委託することを前提としては、中核受託組織を担い手として位置づけることが難しくなることもあるでしょう。そこで、機械の更新などのタイミングを見計らって、転作の受託組織などへの再委託は徐々に廃止して中核受託組織に作業を集約していき、最終的には担い手を取り込んだ形で法人化を目指すことになります。
 次回は、任意組合である集落営農組織や受託組織の会計・税務について説明します。

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