トップページ > 農業法人について > 農業法人経営情報 > 法人化の税務(3)集落営農の組織化の手法











 

法人化の税務(3)集落営農の組織化の手法

森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長
税理士・行政書士 森 剛一
図1

任意組合は組合員の共同事業であるため、共同事業全体の損益を計算するのが基本です。事業全体の損益を計算する点は農業法人と変わりません。任意組合の会計の特徴は、計算された利益を損益分配割合により按分して各組合員に分配することです。各組合員は、按分された利益および出役賃金を組合員の所得に加算します(図1)。税務当局に任意組合として認めてもらうには、任意組合に即した規約の整備と並んで、各組合員が、任意組合に参加したことによる所得を個別経営の所得に加算して確定申告することが不可欠です。

■任意組合の会計方式

 任意組合の会計処理については、―祿枴式、∩躋枴式、C羇嵎式(収入・費用等配分方式)の3つの方法があります。有限責任事業組合(LLP)の会計処理も同様です。このうち純額方式とは、組合を法人のように扱って一企業体として会計処理を行い、計算された損益のみを各組合員に分配する方式です。集落営農の任意組合の場合には、純額方式により会計処理を行うことをお勧めします。一方、施設利用組合などの任意組合の場合には、総額方式によるのが一般的です。総額方式とは、組合を組合員の集合として扱って、組合の収益と費用、資産と負債を各組合員の貸借対照表・損益計算書に直接、反映する方式です。ただし、施設利用組合などの場合には、施設の共同利用が主な目的のため、損益分配割合により按分した施設の取得価額を直接、各組合員の貸借対照表(減価償却資産台帳)に計上してその減価償却費を各組合員の費用とし、組合全体の損益計算を省略する簡便的な会計処理が一般的です。

■出役賃金の取扱い

 任意組合やLLPの組合員は、一般的に、給与という形での分配は受けらません。組合から分配される所得は、組合の事業内容に応じて課税されます。農業の共同事業である集落営農の組合の場合は、農業所得として課税されます。しかしながら、集落営農の組合の場合、]務の対価(出役割)、∩塙腓忙臆辰垢詛醒呂侶弍通明僉別明儚筺法△裡欧弔隆霆爐砲茲辰栃配するのが一般的です。そこで、計算技術上、出役賃金はいったん費用として組合の損益計算を行い、面積割による損益分配の基礎となる利益を計算します(図1)。一方、受託組織の場合には、出役割のみによって利益を分配しますので、出役賃金を費用に計上しないで損益計算を行い、計算した利益を出役時間に応じて分配します。ただし、集落営農の場合と同様、いったん出役賃金を費用として損益計算を行い、計算された利益を再度、出役時間によって分配する方法でも構いません。作業の種類によって出役賃金の単価が異なる場合にはこの方法が適しています。
 出役賃金は、経理上は費用として処理した場合であっても、原則として組合員の農業所得となるため、源泉徴収は必要ありません。この点が、農業法人や個人農業者、人格のない社団となる任意組織と異なります。

■任意組合の会計期間

 任意組合の会計期間は、規約等で自由に決めることができます。必ずしも1月1日から12月31日までの暦年とする必要はありません。任意組合の会計期間が暦年以外の場合には、任意組合分の所得を会計期間の末日の属する年分の所得として組合員の所得に加算します。したがって、会計期間を4月1日から翌年3月31日までとした場合、集落営農の任意組合に係る所得の課税が米や大豆の収穫年の翌年になります。産地づくり交付金など転作助成金についても、集団で交付を受けることができるようになりましたが、任意組合の場合は、これも所得計算に含めます。ただし、転作助成金は、転作を実施した年分の一時所得として申告するのが原則で、翌年分として取り扱うことができるか明らかでありません。このため、会計期間を暦年以外としている任意組合において、転作助成金については、暦年の会計期間による「特別会計」として処理しているところもあります。

■損益分配と申告

 任意組合が計算した利益は、損益分配明細書により各組合員に按分します。損益を分配するといっても、キャッシュで分配する必要はなく、損益分配明細書により各組合員に通知するだけです。組合に利益が生じた場合、各組合員は分配された利益を農業所得の雑収入に加算して申告します。このため、まったく現金を分配しない場合、現金収入がないのに税金を負担しなければならず、税金分が「持ち出し」になってしまいます。
 申告では、組合員の確定申告書に、任意組合の決算書と組合員ごとの損益分配明細書を添付します。LLPでは、会計期間終了日の翌年1月末日までに「組合員所得に関する計算書」を税務署に提出しなければならないのに対して、任意組合はとくに規定がありませんが、同様に決算書等を提出しておくのが無難です。ただし、提出時期については確定申告書と同時で構いません。なお、任意組合に損失が生じたため按分された損失を雑費に加算した場合には、青色申告決算書の「本年中における特殊事情」欄にその旨を記載しておくと良いでしょう。

©日本農業法人協会