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法人化の税務(4)集落営農の法人化

森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長
税理士・行政書士 森 剛一

 任意組織やLLPによる集落営農は、法人に至るまでの過渡的な組織形態です。法人における役員報酬は、税務上、定期・定額が原則とされているため、代表役員に毎月、定額の役員報酬を支給できる体制が法人化の条件です。法人格を持たない組織によって集落営農を運営しながら、法人化に向けた条件整備を行っていきます。

■集落営農の法人化へのステップ

図1

 集落営農の法人化では、新たな集約型作物を導入するなどして、担い手が農業・農業関連事業で生活できる基盤を確保する必要があります。たとえば、地区の農用地の一部を団地として施設園芸を導入するのも一つの方法です。オペレータなど担い手が複合作物も含めて農業で生活できる所得を確保できたら、もう一歩、法人化へとステップをすすめていきましょう。
 任意組合は構成員課税のため、構成員が免税事業者の場合には、任意組合(共同事業)に係る部分についても消費税の負担が生じないことが税務上のメリットです。ただし、個別経営の課税売上高(農産物の販売金額)と任意組合の構成員一人当りの課税売上高(オペレータ料金)を合算して1千万円を超える場合は、課税事業者となります。2階部分の受託組合の構成員の全てが課税事業者となった場合には、任意組合として運営するメリットがなくなりますので、その場合は法人化することが適当です。

■補助事業資産の引継ぎ

 任意組合の農業施設・機械などの資産は、法人に引き継ぐことになりますが、引継ぎ方法としては、譲渡による方法と、貸付けによる方法とがあります。補助金で導入した資産を引き継ぐ場合、補助条件を承継する場合であっても、有償による譲渡、貸付けのときは、補助金の返還が必要とされることがありますので注意してください。ただし、「補助事業等により取得し、又は効用の増加した財産の処分等の取扱いの特例について」(平成16年9月7日付農水省大臣官房経理課長通知)により、補助条件を承継又は農林水産施設として譲渡する場合、有償であっても譲渡益の国庫補助金相当額を納付すればよいこととなりました。この措置は、農業経営の法人化の推進を図るためのもので、圧縮記帳後の帳簿価額で譲渡すれば譲渡益が生じないため、原則として国庫補助金の返還が不要となります。
 したがって、法人に資産を引き継ぐ場合において補助金の返還の問題を回避し、課税を最低限にするには、〔欺で貸し付ける、圧縮記帳後の帳簿価額で譲渡する??のいずれかの方法によるのが現実的です。しかしながら、無償で貸し付ける場合には事業と言えないため、任意組合(構成員課税)において減価償却費や固定資産税などの必要経費が認められません。また、法人においては、損金算入できる経費がないため、その分、課税所得が増えることになります。
 一方、任意組合が圧縮記帳後の帳簿価額で譲渡する場合、帳簿価額と時価が異なるため、資産を譲り受けた法人において税務上、受贈益が発生します。この受贈益相当額は国庫補助金に由来するものであるため、解釈によっては国庫補助金とも考えられますが、国庫補助金として取り扱うことができるかどうか取扱いが定かではありません。国庫補助金として認められない場合には、圧縮記帳できないことから、受贈益相当額は譲り受けた事業年度において課税されます。こうした国庫補助金に由来する受贈益については、圧縮記帳の対象とするよう、取扱いを明確にするか税制を改正する必要があると考えます。受贈益課税による納税負担を回避するには、農用地利用集積準備金の損金算入や転作助成金の特別勘定経理による損金算入などによって、受贈益を相 殺します。なお、任意組合において時価の2分の1未満の金額による譲渡(低額譲渡)とされる場合には、任意組合の構成員に時価相当額で譲渡があったものとして課税されます。

■圃場管理料の取扱い

 法人化した場合、集落営農組織の構成員(委託者)は法人に対して農用地の利用権を設定して、集落の土地利用型農業の経営から離れることになります。しかしながら、地権者の役割を評価し、生きがいを持ってもらうことが重要で、集落の農地の一部を自家用やファーマーズマーケット向け野菜の圃場として確保するなどの工夫が必要です。また、地権者には、法人に出資してもらい、法人の応援団として運営に参加してもらうのも一つの方法です。さらに、水田の畦畔の草刈り、水管理などについては、農業法人の従事者だけで対応することが難しいため、引き続き地権者に担ってもらい、役割分担をすることが双方の利益に繋がります。
 この場合、農地の小作料とは別に圃場管理料を設定して地権者に支払うこととします。大規模な土地利用型農業においては、小作料や土地改良負担金など消費税の課税仕入れとならない経費が多く、本則課税の場合、売上規模に比べて消費税の負担が大きくなります。小作料と圃場管理料を明確に区分して支払うことにより、圃場管理料は課税仕入れとして仕入税額控除の対象となり、消費税の納税負担を減らすことができます。一方、圃場管理を担う地権者にとって圃場管理料は課税売上げとなりますが、地権者が免税事業者の場合には消費税の納税負担が生じません。

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