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平成18年度税制改正による農業法人への影響(1)

森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長
税理士・行政書士 森 剛一

■改正の概要

平成18年度税制改正大綱(抜粋)

十一その他
(国税)
10 法人の支給する役員給与について、次の見直しを行う。

(1) 同族会社の業務を主宰する役員及びその同族関係者等が発行済株式の総数の90%以上の数の株式を有し、かつ、常務に従事する役員の過半数を占める場合等には、当該業務を主宰する役員に対して支給する給与のうち給与所得控除に相当する部分として計算される金額は、損金の額に算入しない。ただし、当 該同族会社の所得等の金額(所得の金額と所得の金額の計算上損金の額に算入された当該給与の額の合計額)の直前3年以内に開始する事業年度におけ る平均額が年800万円以下である場合及び当該平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下である場合は、本措置の適用を除外する。

 昨年12月、平成18年度の与党及び政府税制改正大綱が取りまとめられ、今通常国会に平成18年度税制改正法案として提出されることとなっています。今回はそのうち農業法人に関係のある部分について解説します。
 中小企業である農業法人に関わる部分としては、中小企業の交際費全額損金算入及び留保金課税判定時の同族要件の緩和、役員給与の定時定額要件の緩和などがあり、とくに相続税の物納制度の改正や新会社法の制定関連の改正は、農業法人の事業承継にとって朗報と言えます。
 しかし、一方で、役員給与の損金算入のあり方が見直され、いわゆる同族会社の代表者の給与について、給与所得控除相当部分を経費の二重控除に相当する部分であるとし、法人段階での損金算入が制限されることとなっています。(詳細は後掲囲みのとおり)これを見ますと、同族会社のなかでも1つの株主グループによる保有割合が90%以上のもの、農業法人の場合、いわゆる「一戸一法人」がこれにあてはまり、税理士など関係者の間では、その影響を心配する声が聞かれています。

 例えば役員報酬1千万円の会社にあてはめると、これに対する給与所得控除額の220万円が認められないこととなるので、実効税率が30%であれば、年66万円の増税となります。

■「一戸一法人」は注意!

 大綱の「ただし書き」にもあるとおり、法人の所得規模すなわち「所得等の金額」が小さい場合には、適用除外となります。この「所得等の金額」(ここでは「役員報酬支給前所得」と言い換えることとします)とは、役員報酬をゼロと考えた場合の法人の所得金額ということになりますが、この制度が適用されないのは、次の2つのケースの場合です。

〔魄報酬支給前所得の3期平均額が800万円以下の場合
¬魄報酬支給前所得の3期平均額が年800万円超3,000万円以下であり、かつ、当該平均額に占める当該給与の額の割合が50%以下の場合

 一戸一法人のうち代表者の役員報酬だけで800万円を超える法人の割合は定かではありませんが、これを超える法人では黒字であれば、上記の,砲漏催しません。また、役員報酬支給前所得が3千万円を超える法人は少ないものの、3千万円以下の法人では代表者の役員報酬と法人の税引前当期利益を比較した場合、通常は役員報酬の方が多いケースが大宗を占めるものと思われます。その場合は△乏催しません。一家族による株式の保有割合が90%以上の場合、ゝ擇哭△里い困譴砲盂催しなければ、役員報酬の給与所得控除額相当額の損金不算入制度が適用されることとなるわけです。

■どのような対応が必要か?

 今回の改正案は、単なる節税目的での法人化を抑制する効果をねらったものといえますが、「他産業並」の経営を目指してきた農業法人にとっては、その目的追求にとっても影響は少なくないとみられ、経営上何らかの対策を講じていく必要性が考えられます。
 これには例えば、一戸一法人における一家族の株式(出資)の保有割合を90%未満に下げる方法があり、具体的には、株式の一部を第三者に保有してもらうことになります。ごく親しい友人などに保有してもらう方法もありますが、保有者が死亡して相続が発生した場合等の対応についても、想定しておく必要があります。また、無議決権株にして影響力の行使を封じてしまうという方法もありますが、平成18年度税制改正では「同族会社の判定の基準に議決権等を加える」こととなっており、無議決権株(出資)は同族会社の判定の際の保有割合の計算上、除外されることになるようです。この場合には、いくら無議決権株を発行して第三者に保有させても意味がないことになります。
 そこで、いわゆる「安定株主対策」として、議決権のある株式(出資)を第三者に安定的に保有してもらうことが考えられ、その場合の「安定株主」の対象としては、アグリビジネス投資育成(株)やJA等があります。なお、農業生産法人の場合、第三者に株式を保有してもらう際には農地法による構成員要件に留意する必要があります。
 次回は、事業承継関係の税制改正について解説するとともに、給与所得控除相当額の損金不算入制度の詳細が明らかになり次第、その続報をお伝えすることにします。

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