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平成18年度税制改正による農業法人への影響(2)

森税務会計事務所 所長
全国農業経営コンサルタント協議会 専務理事・事務局長
税理士・行政書士 森 剛一

■相続税物納制度など事業承継関連の改正

 これまで、相続税の物納制度については、物納許可基準が不明確であったため、非上場株式や市街化調整区域内の農地・山林については、物納申請後に不適格とされることがありました。今回の物納制度の見直しによって、農業法人の株式や農地・山林についても、要件を満たせば物納の対象となります。
 従来は、相続税基本通達において管理処分不適格財産の取扱いが示されていましたが、あくまで例示に過ぎませんでした。今回の見直しでは、(納不適格財産を法令に限定列挙することによる物納許可基準の明確化、∧納手続きの迅速化、1簀失て颪箸覆辰疹豺腓吠納を認める制度の創設など利便性の向上――が図られます。物納制度の改正は、平成18年4月1日以後に相続等により取得した財産にかかる相続税について適用されることになります。
 相続財産のほとんどが非上場会社の株式で現預金が少ない場合、これまでは、事業承継が困難になることもありました。今後、後継者が相続した株式の一部を物納することができるようになれば、事業承継が円滑になります。相続後しばらくして後継者が資金を貯めてから物納した株式を買い戻したり、物納した株式を会社が買い取ってこれを適宜、経営者等が買い戻したりすることも可能になると考えられます。なお、法人税法の取扱いにおいても、法人が自己の株式を取得した場合には、資産に計上しないで、その取得のときに資本等の金額を減少させることになります。
 これに関連して、新会社法の制定により、自己株式の機動的な取得ができるようになったことも朗報です。また、株式譲渡制限会社(農業生産法人である株式会社はこれに該当する。)では、無議決権株式など議決権制限株式の発行限度(発行済み株式総数の2分の1)が撤廃さました。今後、相続の際、事業承継者以外へ相続する株式は、議決権制限株式とする方法も考えられます。

■留保金課税や交際費課税の緩和

 同族会社の留保金課税については、一定の要件のもと不適用措置が実施されていますが、不適用措置の一部が廃止される一方で、適用要件が緩和されます。まず、同族要件が3株主グループから1株主グループによる判定になるほか、留保控除額の所得基準額が中小法人(資本金額1億円以下)では50%(現行35%)に、定額基準額が2,000万円(現行1,500万円)に引き上げられます。なお、設立10年以内の特定の中小企業者と自己資本比率50%以下の中小法人に認めていた留保金課税の不適用措置は廃止されます。また、前回も述べたとおり、同族会社の判定の基準に議決権等を加えることになります。
 交際費課税については、一人当たり5,000円以下の一定の飲食費については、交際費等の範囲から除外され、その全額が損金算入されます(前回no.279で「中小企業の交際費全額損金算入」とありますが、「5,000円までの飲食費の」が抜けておりました。お詫びして訂正いたします。)。ただし、飲食費が1人5,000円を超える場合には、全額が交際費に該当することになります。また、役員間の飲食費は従来どおり交際費課税の対象とされることになる見込みです。

■役員給与の定時定額要件の緩和

 これまで法人税法では、役員報酬と役員賞与を区別し、役員報酬のみ損金算入を認めてきました。今後は「前決め」の役員給与であれば、損金算入されることになります。これまで損金算入される役員給与は、毎月定額の役員報酬のように1月以下の期間を単位として定期的に同一の額を支給するもの(「定期同額給与」)などに限られてきました。今後は、「確定した時期において確定した額を支給する旨の定めに基づいて支給する給与」すなわち特定月の増額支給部分についても、所轄の税務署長に事前届出を行えば損金算入されることになります。この場合の税務署への事前届出ですが、特定月の増額支給部分についてのみを届け出るのではなく、毎月の役員報酬相当額も加えた事業年度中の支給総額を事前に届け出る必要があります。
 なお、業績連動型役員報酬が損金算入されると報道されていますが、対象となるのは同族会社以外の業務執行役員です。同族会社の場合、利益を基礎として算定される給与(「利益連動給与」)については、従来どおり、損金算入されません。

■少額減価償却資産の取得価額の損金算入制度の見直し

 取得価額30万円未満の減価償却資産の即時償却を認めた、中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例(即時償却)について、合計額による制限が設けられます。その事業年度に取得等した少額減価償却資産の取得価額の合計額が300万円を超える場合、超える部分に 係る滅価償却資産は特例の対象から除外されます。たとえば農業法人では、搾乳牛を自家育成した場合において取得価額が30万円未満になるときは、成熟(=初産分娩)した事業年度に搾乳牛の取得価額の全額を損金算入することができます。これまでは合計額に制限がなかったため、大規模な酪農経営においてその節税効果は大きいものでしたが、今後は年300万円が損金算入の限度となります。

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